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トーマス・ローデ公開レッスンメモ

 

去る2000年10月21,22日にトーマスローデ氏のレッスンに参加し、私なりにレポートにまとめてみました。初心者の方、アマチュアの方、音大生の方々にも多少なりとも参考になれば幸いです。

 

氏の発言と比べて足りないところや、その意図するところと違いがあるかもしれませんが、ご了承下さい。

 

2000年10月21,22日 鈴木久仁夫

 

基本の腹の作り方

腹は絶対に硬直させず、ゆったりとくつろげて充分に息を吸い、そこで音の支えを作った上で、たっぷりと息を吹き込んで、のびやかな広がりのある音を出します。実際にゆっくりと歩きながら吹く練習も効果的です。ベルトを生徒の腹に巻いてふくらませ、腹の感覚をつかませる練習も効果的です。

 

咽喉(のど)と体の広げ方

咽喉で締め付けないように注意して下さい。ほとんどの人が、そうなりがちです。大きな音は口をいっぱいに開け、息をたくさん使って吹くこと。こうすると暖かく豊かな音色になります。ただし大きな音でも耳に立つ音になる事は極力警戒すべきです。音の広がりは自分の体を上下に、前後に、左右に広げることで表現します。

 

アンブシャー

下唇で浅くくわえて大きく巻き込みます。巻き込んだ下唇の上にちょうどベッドの上に体を横たえるようにリードを置いて下さい。上唇はほんの添える程度で充分です。口は上下に大きく開けます。こうすることでいろいろなバリエーションのある表現が可能になります。音のコントロールは下唇との接地面が大きいほど楽になります。口をいっぱい開け、リードを充分振動させ、息をたっぷり送り込みます。昔はリードを上下の唇でペチャリとくわえてチャルメラのように吹いていたのでしょうが、だんだんこのような吹き方が工夫されてなめらかで伸びやかな音になってきたのでしょう。

 

楽器を持つ角度

楽器の角度はあまり上げ過ぎないように。リードが下唇から離れて、コントロールできなくなってしまう危険が出てきます。

 

音の出だし

音の頭は破裂音にならないように極力注意すべきですが、日常の練習、また残念な事にコンサート本番でもこの事故がしょっちゅう起こっています。上記の注意を守り、アンブシャーのところを良く読んでおけば、丸みのある美しい出だしになります。

 

演奏の時の顔つきについて

苦しそうに吹かないで下さい。目を輝かせて活き活きとした表情で吹くべきです。実際、オーボエは苦しい楽器なのですが、それを客に決して悟らせないように吹かなくてはなりません。こわい顔で吹かないで下さい。お客様に品物を勧めるように吹いて下さい。お客様が売り物が良くわかるように、買う気がおこるように吹きましょう。苦しそうな顔だとお客様が逃げてしまいます。自分の意図を客に伝えるには柔らかな明るい表情が、まず必要です。

 

音質について

音質を美しくしないと客は退屈します。fでもpでも充分コントロールされて、自由でなおかつ響きもなければなりません。アンサンブルの中では目立ち過ぎないように、ソロではオーケストラと対等な音量も必要になってきます。高音についてはやせないように工夫して、口を開いて響きを持たせて吹いて下さい。あくまでも音質は音楽を演奏する上での一つの要素です。

 

タンギングについて

上記の注意を守れば、「ベッ」「ビャッ」というタンギングでなくて、ちゃんとその楽器の音色が詰まった丸いタンギングになります。「テュッ」「デュッ」という感じで吹きます。タンギングの直後、発音を舌先で止めてしまう癖を持った人がいます。この原因は、緊張して腹を硬直させてしまって、本人の意図と逆にかえって息の支えが弱くなってしまっている結果、タンギング直後に音が垂れ下がってしまうのを、無意識的に舌の先でリードを止めてしまうことによります。上記のとおりに腹とアンブシャーをきちんと作り、舌を引いたままにすれば防げます。聞き手が自由さを感じるように吹いて下さい。ブリリアントでエレガントな演奏は一つ一つの音を均質にすることで可能になります。ただし、均質な音作りは機械的なフレージングとは全く違います。一つ一つの音の価値をすべて引き出すことが均質な音づくりということです。すぐ間違えて機械的になりがちなので、充分注意して下さい。

 

フレージング

そのフレーズの持っている「物語」を聞き手が理解できるように、語りかけるように吹いて下さい。この場合「あたま」で吹くとかえってまずくなる場合があります。「腹」と「こころ」で吹いて下さい。長いフレーズの流れをとらえた上で、その中で短いフレーズを作っていきます。

 

ダイナミックス

pとfの区別は、音の大きさでなく、差をつけることで表現します。fの時、舌と指は固くしないで下さい。意識的に軽やかにしないと豊かなfでなく、単なるうるさいだけの大きな音になってしまいます。

 

クレッシェンド、ディミヌエンド

クレッシェンドは体もふくらむようにして表現しましょう。ディミヌエンドの時は、それを支える腹の方はたっぷりとした息で支えないと曲が垂れ下がってしまいます。ディミヌエンドは、その前のフォルテがきちんと出ていれば楽に表現できます。クレッシェンドは、表示が出てもギリギリまで我慢すること。

 

ヴィブラート

ヴィブラートは音の上にかけて下さい。音の下にもぐらせないこと。ヴィブラートの練習はゆっくりからだんだん速くしていきます。ゆっくりしたヴィブラートを目指して練習すると、ヴィブラートを意識的にコントロールすることが出来るようになります。ゆっくりとした練習とは余裕のある練習という意味です。充分に余裕を持って練習して下さい。余裕が無い練習では自分をコントロールする練習は無理です。速い曲のヴィブラートは「重要な音」にかけて下さい。例えばフレーズの頭にかけると音の重量感が増し、曲の速さに安定感が加わり、旋律に歌が生まれてきます。ヴィブラートは作曲家によってかけ方が異なります。ブラームスのヴィブラートは速く、ワーグナーのヴィブラートはゆったりです。どんなヴィブラートがその作品に適しているか良く考えましょう。曲によって、その美しさが一番良く表現できるヴィブラートを意識的に使いわける必要があります。

 

カデンツァ

速い楽章の前の、緩徐楽章のカデンツァ(モーツァルトのコンツェルトの第二楽章など)は、たとえゴチャゴチャしていてもゆったりと、そして変化をつけて吹いて下さい。そうしないと次の速い楽章との間の変化を聞き手が楽しめなくなります。カデンツァの演奏のこつは変化をつけて、その中でいろいろな歌を歌うことです。

 

ソロの時のイメージは大ホールで吹いているように吹きます。
 

ブラームスの交響曲一番の有名なソロ

上の音が特に重要なので特に美しい音で吹いて下さい。

 

同じ曲の有名な最初にロングトーンが出てくるソロ

最初の長い音が退屈になってしまわないように、小さく始めてだんだん大きく、そして美しくヴィブラートをつけていきます。

 

ブラームスのVn協奏曲二楽章冒頭のソロ

フレーズの最初は単純に子供の曲のように吹きます。フレーズの進行に連れてだんだん深いドラマが始まります。オーボエの出来る美しさが全部表現できるフレーズです。ここで客を泣かせなくてはオーボエ吹きになった甲斐がありません。

 

ブラームスの交響曲三番のソロ

Vn協奏曲のソロはひっぱると良くなる音楽ですが、これは正反対で凝縮すると良くなります。

 

ブラームスのハイドンの主題による変奏曲

この曲を聞いて、pがどれ程大切かを客があらためて思い知るように吹いてみましょう。

 

モーツァルトのセレナーデ「ナハトムジーク」

セカンドの重要性がとても高い曲です。セカンドがうまければファーストは楽に吹けます。双方うまくなければ音楽になりません。セカンドの刻みを音楽的にすると曲が生きます。セカンドは緊張しても音楽を固めてしまわないように注意すること。

 

名歌手のような響きで吹いて下さい。パバロッティのように。

どんなに複雑で速いパッセージでも聞き手に難しさを感じさせないように吹けるように努力しましょう。軽々と楽しそうに吹けるように努力して下さい。前へ前へと演奏して下さい。少なくとも聞き手に前進の意気込みが伝わるように演奏します。より多くの息をオーボエの中に吹き込むことを心がけて下さい。指は常に軽く、できるだけ小さな動きで。大きな動きでバタバタ動かさないで下さい。かえって難しく、不確かな運指になってしまいます。また、指はこわばらせないこと。柔らかく持って下さい。速い曲はできるだけフレーズを長く理解した上で軽やかに吹き、軽快さの中になだらかな歌が聞こえるように吹きます。聞き手がいろいろな楽しみを感じ取れるように吹くべきです。ゆったりしたフレーズの演奏は良い音で、機械的にならないように吹いて下さい。

 

目を輝かし、腹を十分に働かせて吹いて下さい。

モーツァルトの協奏曲の第二楽章のようになだらかな曲の場合、フレーズの中の音は全てきれいに吹き、全てヴィブラートをかけて吹いて下さい。ヴィブラートがあったり、なかったりするようでは駄目です。高い音はもっと腹をたっぷり使ってきれいに響かせ、ヴィブラートが聞こえるように吹いて下さい。ピーピーキーキー吹くことは絶対にやめて下さい。きれいに吹いて下さい。リードをビチッとさせたり、ビャーとさせたりは絶対しないこと。少しでも気を抜くとすぐにそうなります。可愛らしい音、聞き手がおもしろみと興味を抱ける音を目指しましょう。
 

繰り返されるフレーズの演奏は、最初は二人でワイングラスを傾けるように、二度目は彼女の体を優しくなでるように。

低音のアクセントは「ッタ」ではなく「ンダ」と、かけて下さい。速い曲は、速度を速くするのではなく、より軽やかにフレーズを作り、その中であるべきところに軽やかで適切なアクセントをつけ、クレッシェンド、ヴィブラートをつけて吹いていきます。また、ていねいに吹くことも忘れずに。オケでの吹き方は一番奥の客に届くように伸びやかに豊かに吹きます。そのくらいで丁度良いです。客に届く音というのは、大きい音という意味ではなくて、客に意図が伝わる音という意味です。何で自分が引き付けられるのか客自身がわからないところを、こちらはきちんと理解して吹かねばなりません。

 

 

以上のようにして作る良い音楽は常に事故と紙一重です。だから事故が起こって当たり前なのですからびくついて吹かないで下さい。びくつくことで生じる無用の緊張感が事故を生み出す危険性も出てきてしまいます。事故を気にしないで下さい。決然として、そして常に前進の意志をみなぎらせる吹き方さえしていれば客の耳には事故はそれほど目立ちません。リラックスして注意深く、集中して、楽しく、積極的に、伸びやかに演奏しましょう。

 

 

おわりに

本来予定の無かった22日に、21日に聴講した人たちの為に追加でレッスンをしていただきました。私も1時間ほど、有意義なレッスンを受けられて非常に幸せでした。
氏の人間味溢れる人柄、音楽性に心から感服しています。

 

 

●インタビュー ●トーマス・ローデ公開レッスンメモ

聖路加国際病院礼拝堂でのコンサート報告とヨーゼフの楽器の効能について ●写真絵日記2002フランス

●インタビュー(ヘンリック・ヴァールグレン氏)NEW!

 

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